フルート上達の秘伝

短時間で最大の効果を上げる練習方法を公開しています

Flexibility 10 : Difficult Passages with Good Quality

難しいパッセージを良い音質で吹く方法について説明します。
一般的に速くて難しい部分は悪い音で吹いてしまう傾向があります。
また、スタッカートはレガートよりも悪い音で吹いてしまいがちです。
それには、大きく2つの原因があると考えられます。
1つは、速いパッセージやスタッカートは、個々の音が短いため、吹いている本人が、良い音質であるか悪い音質であるかが聴き取りづらい事によります。
つまり、悪い音質で吹いてしまっても気づかないわけです。
もう1つは、速いパッセージでは、指が速く動くので、楽器を支える事が不安定になってしまう事によります。
頭部管と顎や唇との位置を常に一定にできないと、吹き込む息の方向や唇から歌口までの距離が変わってしまい、良い音質で吹く事ができません。
また、唇に力が入ってきます。
このように、難しいパッセージを常に良い音質で吹く事は大変難しいのですが、それでも世界的な名手は素晴らしい音質で難しいパッセージを鮮やかに吹く事ができます。
難しいパッセージを、いくら速く吹いても、音質が伴っていないと決して良い演奏に結びつきません。
逆にロングトーンは、指が動かない、または指の動きがゆっくりなので、良い音質で吹く事は簡単だと言えます。
ロングトーンだけを良い音質で吹いて、それ以外の物を良い音質で吹けないのでは何の意味もありません。
以下の練習方法を参考にして、全て良い音質で吹く事を目指してください。
ペーター=ルーカス・グラーフ氏は、彼の著書「チェックアップ」の冒頭に「どの課題も音の練習とみなし、そのつもりで練習しましょう」と書いています。
この素晴らしい姿勢を忘れないで練習してください。

 

Difficult Passages with Good Quality p.1



Difficult Passages with Good Quality p.2

 

Difficult Passages with Good Quality p.3

 

Difficult Passages with Good Quality p.4

 

Difficult Passages with Good Quality p.5

 

【1】フォーレ:ファンタジー
曲中ではpで吹く所です。
fで吹けてもpだと不正確になったり音質が悪くなったりします。

【1a】ffとpp、またはfとpの両方でのリズム練習です。
まず、ffで良い音質、良い音程である事を確認しながら何回も練習します。
常に安定した奏法である事もチェックしてください。
上手く吹けるようになったらppで練習します。
お腹の圧力と構えの圧力がないと高音域で唇が締まってしまいます。

【1b】【1c】頂点部分の折り返しリズム練習です。
これもffとppの両方で練習します。
唇が固くなっていないか注意します。

【2】ゴーベール:ファンタジー
難しい16連符の1つ1つの音符を良い音質で演奏しなければなりません。

【2a】4分音符にヴィブラートを付けて音量と音程をチェックします。
長い音符は聴き取り易いです。
ffで何回も練習した後にppで練習します。
ブレスが必要な時はタイの所で取ります。

【2b】高音域の折り返しリズム練習です。
ffとppで練習します。

【3】シャミナード:コンチェルティー

【3a】4分音符にヴィブラートを付けて音質、音量をチェックします。
4分音符が良い音質で吹けていれば、他の音符も悪くない音質で吹けているはずです。

【3b】パッセージが長いので、分割して何回も繰り返して練習する事は極めて効果的です。
ffで何回も練習した後にppで吹いて同じくらい良い音質、音程である事と奏法が安定している事をチェックします。
全ての繰り返しを良く練習したら、繋いで通して吹きます。

【4】ユー:ファンタジー
32分音符の細かい動きを良い音質で鮮やかに吹きます。

【4a】4分音符にヴィブラートを付けて、音質、音程をチェックした後に他の音符の音質もチェックします。

【4b】【4c】分割してffとppで折り返し練習します。

【4d】G2⇒F2⇒E♭2⇒D2の長い音が良い響きである事を確認した後に16分音符、8分音符の音質をチェックします。

【5】ゴダール:ワルツ
すでに冒頭に書いた通り、スタッカートはレガートやテヌートに比べて音質が悪くなりやすいです。
【5a】【5b】を丁寧に練習した後にスタッカートと音質を比較しましょう。

【5c】【5d】指が難しくなっても音質が悪くならないようにレガートで折り返し練習をします。

【6】ゴダール:ワルツ
ズラリと並んだ全ての8分音符を鮮やかに吹きたいものです。

【6a】【6b】4分音符で奏法が安定しているかをチェックします。

【6d】【6d】高い音域で折り返しリズム練習を行って、音質と奏法の安定をチェックします。
指の練習もできて、一石二鳥です。

【7】ニールセン:協奏曲

【7a】【7b】リズム練習。
4分音符で音質と奏法の安定をチェックする事ができます。
指の練習にもなります。

【8】イベール:協奏曲
難しいパッセージです。
良い音質で正確に吹くには、奏法の安定と息の圧力が極めて重要になります。

【8a】4分音符で唇が緊張していないかチェックします。
リズム練習を行う事によって指がスムーズに動くようになります。

【8b】6連符を2連符+4連符に感じて、さらに2連符を倍の長さにした変奏です。

【8c】高い部分のリズム練習です。

【8d】6連符+6連符の12個の音符を4連符+4連符+4連符に分けたリズム練習です。

【9】ボルヌ:カルメンファンタジー

【9a】スタッカートは音質が悪くなりやすいので、まず、レガートでリズム練習します。

【9b】楽譜通りのアーティキュレーションを付けたリズム練習です。
レガートで吹いた時と同じ音質で吹く事ができているかを比較します。